各部門審査講評

【美術部門】

鳥取県立博物館館長 尾﨑信一郎(おさき しんいちろう)

 昨年に続いて新型コロナウイルス感染症が広がりを見せた今年、果たして展覧会が開けるだろうか、作品が集まるだろうかという懸念がありましたが、美術部門に昨年より多い397点の作品が応募されたことを大変嬉しく感じます。コロナ禍の中での制作はいろいろと苦労も多かったことではないでしょうか。応募いただいた皆さん、お手伝いいただいた施設や関係者のみなさまにまずは深く感謝いたします。

 この展覧会も7回目を迎え、県の中でも定着してきたと思います。コロナ禍の中でも一定の応募があったことはそれを裏づけているでしょう。応募される作品の中にも初めからこの展覧会への出品を想定した大作、あるいは時間をかけて制作された作品が散見されるようになったことも嬉しい手応えです。単に作業や課題としてではなく、それぞれの個性を最大限に発揮した作家性のある作品が今後さらに増えていくことを期待したいと思います。

 今年の出品作も様々な分野にわたって多様な表現が認められ、楽しく審査することができました。にぎやかな作品からシンプルな作品、遊び心に満ちた作品から実用的な作品まで同じ会場で出会えることがこの展覧会の大きな魅力です。

 最優秀賞の池本さんの作品は画面を四分割して、虫や海の生物、車と日常の品をタイトル通り頭にひらめくままに描いた楽しいタペストリー(壁掛け)です。一つ一つが丁寧に描き込まれ、作者の思いが伝わってきます。この作品と最優秀賞を争ったアプローズ来夢の作品は割りばしやアルミホイルといった身の回りの品をコラージュして、ムンクの「叫び」を浮かび上がらせるという奇抜な発想で集団制作ならでは楽しさが感じられます。残り二つの金賞、西尾さんの書と栗本さんの絣はともに一転して色彩を抑制した抽象的な表現の中に作家の個性がはっきりと示されています。

 今挙げた作品からもこの展覧会の多様さが伝わってくるでしょう。少し気になったのは例年より小ぶりな作品が多かったことです。やはりコロナ禍ゆえの不自由があるのでしょうか。世の中が落ち着きを取り戻すのにつれて、さらなる大作や意欲作に取り組んでいただくことを期待したいと思います。

【文芸部門】

日本現代詩人会、鳥取県文芸協会 漆原正雄(うるしばら まさお)

 本年度文芸部門の出展作品は詩27点、短歌5点、俳句4点、川柳6点の42作品で、どの作品からも真摯に自己を見つめる姿勢が感じられ、あらためて言葉のもつ魅力と可能性に気づかされた。手書き文字それ自体に思いがこもっている作品も多く、いくらデジタル化が進んでも補えないのは〝手の温もり〟。今後もじっくりと手間をかけて創作に挑んでいただきたい。期待しています。

最優秀賞・詩「たまご」戸塚絢夏音さん

 「自分の好きな料理をつくりたい」という決意表明が冒頭と結末に置かれていて、自分も他者もまるごと受け入れたうえで〝個性〟を歌っているとても素晴らしい詩。「料理にも正解はないように人間にも正解はない」(4連)。作者の眼差しが森奥深くの湖のように澄み渡っており、読み手の心の隅々まで届く。一人でも多くの方に読んでいただきたい。

金賞・詩「えびのうた」木下翼さん

 「ぼく」は〝えび〟で、「おいしいフライ」になり、おばあちゃんたちに食べてもらうというストーリーの流れの中に、人を思う気持ちや幸福への志向性がある。この詩の凄みは、みんなに食べられてからも「うれしいな」という言葉が木霊しているところ。魂の尊さ、命の循環をも軽やかに歌い上げている。

銀賞・詩「雪の城のクリスマスパーティー」松田早希さん

 詩というよりショートストーリー。400字詰め原稿用紙10枚の力作であるが、二人の妖精が働いているパン屋さんに、サンタの国から男女の魔法使いがやって来て仲良くなり、お城で行われるクリスマス会に招待してくれるという設定がとても魅力的で、すいすい読まされる。展示会場で読むのは少し時間がかかるかもしれないが、ぜひこの心温まるファンタジー世界を堪能していただきたい。

 全体的に銅賞の「おいしい秋」(下山舜さん)や佳作の「チョコパフェたべたい!」(URUKIさん)など、食欲をそそる詩が目立った。また佳作の「希望(きぼう)」(桜ねこさん)の「世界はね、/言葉がない方が豊かなんだよ。」という詩行は人間の抱える自家撞着性を看破していたし、文芸部門最大の問題作である濱根美佐子さんの詩「リズム」には大いに感性を刺激させられた。

 夜空を見上げれば星々が輝きを放っているように、目をつぶれば何かが瞬いています。会いたい人や懐かしい人、葛藤やよろこび、今胸のうちにある思いなどが流れ星のように過ぎ去っていく。

 それらを言葉の鋲で留めていけば、そしてそこに描かれた点を結んでいけば〝あなただけの星座〟が生まれるはずです。

 心の奥深くにある天の川をめぐりながら天体観測を続けていけば、必ずや〝思いの深さ〟にたどり着くことができます。それが、そのことが、文学・文芸の素晴らしさであると私は考えます。

 次回も個性豊かな作品に出合えますように。

【マンガ部門】

株式会社ラ・コミック代表取締役 寺西竜也(てらにし たつや)

 今回で7回目を迎える審査会は、作品の水準が以前にも増して上がっており、驚きと喜びが隠せませんでした。初めてのご応募で入選された方もいます。

全作品ともマンガの基本的な部分が押さえてあり、伝えたいメッセージもジャンルも多彩なものでした。数年前の審査会であれば確実に入賞していたであろうと思われる水準の作品が選考から外れるという場面がありました。その中には常連の応募者の方もいましたが、入選しなかったからといって、決してご本人のレベルが下がったのでは無いことをまずお伝えしておきます。

また、全体に前向きで明るいトーンの作品が多かったのも印象的でした。ここしばらく私達の生活はコロナ禍で不安と不便を強いられていた毎日でしたが、障がいがある方にとっては不便な生活を強いられることは日常に過ぎず、その多くは前向きに考えれば解決できることを全ての応募作から感じとることができました。

最優秀賞の「呪いにかけられて」(作:みなとくん)はキャラクターの造形、セリフ、展開に斬新さがあり、2体のキャラクターが登場してもお互いに会話することなく、物語が展開していて、とても面白い内容となっていました。キャラクターデザインも独特で、ここに来るまでにもずいぶん描いたのではと感じさせる完成度でした。

金賞の「ビーバー日記」(作:なっこ)は主人公が明確で、擬人化されたビーバーが繰り広げる楽しい日常が描かれています。セリフも演出も非常にていねいで、表情豊かに描かれており、画面構成も描き慣れている感じで安心して笑える作品です。

銀賞の「シュール」(作:とよちゃん)は逆にクールなタッチで、極力シンプルに画面構成を行い、ニワトリとひよこを使った、かわいい4コマ✕2本での展開です。「あるある!」と笑わせてくれながらも余韻の残る風刺が効いています。

銅賞の「少女漫画のテンプレ」(作:潮伽羅)は、「漫画を読み慣れてるな~」と感じさせるこなれた感覚があり、その上で少女漫画にはありそうで実際にはあまりない感じのシチュエーションを、雰囲気たっぷりに描かれていました。絵柄がテーマにマッチして1コマ目から笑いを誘います。オチも秀逸でしたが、主人公の女の子の妄想ぶりは3コマ目まであった方が4コマ目のオチっぷりは、より落差を感じられたかと思います。

審査員特別賞の3作品は、それぞれエッジの効いた作品群です。

「難聴いろいろ」(作:ふじた ごうらこ)はオチはないですが、情報漫画として内容も非常にわかりやすく、伝え方も的確。広報誌の片隅に普通に載っていそうな作品でした。

「無題」(作:社)は伝えたいことがたくさんあり、いろいろ考えた上での「無題」なのだというメッセージが込められていました。こういった自分の考えを述べる手法もこれから発展してくるのではと感じさせる作品でした。

「いつもの私」(作:山本淳子)は2本の4コマでしたが、1本目は主人公が分かりにくかったものの、ほっこりする話です。2本目の猫の記憶力の話は雰囲気が抜群でした。同ポジもの(同じ絵を使って、モノローグで繋ぐ形式)として、秀逸な構成でした。

佳作の「もぐもぐタイム」(作:えのきたけ)と「スープ」(作:命華)はタイトルにオチが書かれている「出オチ」スタイルでしたが、2本ともタイトルを変えていたらかなり良かったかもと思わせる作品でした。「もぐもぐタイム」は4コマ目に5コマ目を追加してしまったのが惜しかったと思います。仕上げが美しく、伝えたいことがわかるだけに4コマで仕上げて欲しかったです。

「反対」(作:太田垣 康二)はリズムが良く、とにかく勢いのある元気な作品です。タイトルと内容が少しミスマッチだったと感じます。ツボに入れば大爆笑を誘えるくらいのパワーを秘めている作風なので、今後に期待です。

「孔」(作:月猫)は最後の2コマがイメージが重複していたので、そのぶん、主人公の黒猫の苦しみをもっと描写できたかなと思いました。

「ねずみのチュータ」(作:益田 恵)はとにかくたたえあって生きる2匹のネズミキャラが可愛いし、ほのぼのします。気持ちよく暮らせることがテーマになっているので、内容に「これでスッキリ!」みたいな工夫がもう少しあれば魅力が増すように思います。

「オリンピック対コロナ」(作:水鴨 均)は時事をつかんだ唯一のコロナとオリンピックの作品でした。「負けないぞ!」「負けないで!」というメッセージが伝わってきました。

「池照タクヤの幸難」(作:ヒノキ風味)は応募作の中でもシリーズとして描かれている作品で、今までの作風からガラッと変えてしっとりとした作風に変わっており、作者の新境地を目指す意気込みを感じさせます。困難をハッピーに変えるポジティブイケメン池照タクヤの魅力について、少し説明不足に終わった感があるので、まだまだ試行錯誤中という印象でした。今後に期待します。

こうして作品を一つ一つ見ていくと、どの作品も想いを込めて丁寧に書かれたものであることがわかると思います。それぞれの作者が、これからさらに生み出す作品がとても楽しみです。